※ネタバレを含みます。ご注意ください。
犬が人間に「してほしいこと」を語りかける「犬と私の10の約束」(犬の十戒)は、どれも納得できるものであり胸を打ちます。
しかし、ペットをいつ何時でも愛して完璧にお世話することや、生涯かけて継続することの難しさを感じる方は多いのではないでしょうか。
約束を忘れていく人間の身勝手さを痛感しながらも、ソックスはそれでも幸せだったと信じます。
出会い~薄れゆく関係
ソックスを飼うにあたり、あかりの母は「命への責任感を持つこと」を教えるために「10の約束」の話をしたのではないかと思います。
その後のあかりは、ソックスとの絆を深めつつ、自然と「10の約束」を守っているようにみえました。
しかし、あかりとソックスの関係性は、あかりが成長することで薄れていきます。
この状況に、私は過去の同じ年代の自分を思い出していました。
14歳で最初の犬を迎えたころは存分に可愛がっていたのに、いつしか自分のことばかりで散歩すら家族に任せ、結婚し家を出たこと。
今思うとペットに対して本当に申し訳なく、胸が苦しくなる思い出です。
その頃の私と同じように、成長したあかりは長年一緒にいるソックスを空気のように感じているように見えました。
そして「いることが当たり前」の感覚を持つあかりを責められない自分がいました。
ありがとう、ソックス
ソックスが亡くなる場面で、あかりが改めて「10の約束」を確認していく姿に、私は気付くとあかりと一緒に確認していました。
約束を守れなくても、守っても、ソックスはあかりを愛し抜いたことは確かでしょう。
ソックスの大きな愛が「約束」に勝ったと感じています。
あかりのソックスへの最後の呼びかけの言葉「ありがとう」はソックスが捧げてきた大きな愛に対しての、精いっぱいのお返しの言葉だと思いました。
「10の約束」の中にあるひとつに「私は10年ほどしか生きられません。だから私とできるだけ一緒にいてください。」とあります。
あかりはこう言いました。
「10年か、長いね」
実際はどうでしょうか。
愛するペットとの別れを経験したみなさんなら痛いほどおわかりかと思います。
「犬と私の10の約束」をご覧になり、犬からのメッセージをぜひ映画を通して受け取ってみてください。
あらすじ
※「犬と私の10の約束」はネットフリックス・Amazonプライムなどでご視聴いただけます。
作品詳細
配給:松竹
劇場公開日:2008年3月15日
原作:「犬と私の10の約束」川口晴
スタッフ・キャスト
監督:本木克英
脚本:澤本嘉光・川口晴
撮影:藤澤順一
斎藤あかり:田中れな・福田真由子
斎藤芙美子:高島礼子
斎藤祐市:豊川悦司
星進:加瀬亮
ほか
北海道の函館で暮らす14歳の少女、あかりは、忙しい父と優しい母との3人暮らしだった。
ある日、彼女の家に1匹の子犬が迷い込んでくる。
あかりは犬を飼うことにし、名前を「ソックス」とした。
母はあかりに、犬を飼う時には「10の約束(犬の十戒)」をしなければならないことを教える。
大人へと成長していくあかりに次々と試練がやってくるが、ソックスはどんな時も彼女を支える存在であり続けた。